不妊の原因は内分泌かく乱物質?妊活中に見直したいプラスチックと電子レンジ習慣
「体質だから仕方ない」「年齢のせい」と、不妊の原因を自分だけの問題だと思っていませんか?
実は、私たちの⽣活環境そのものが、知らないうちに⽣殖機能を傷つけている可能性があります。
1973年〜2011年の約40年間で、先進国の男性の精⼦数はおよそ50%も低下したと報告されています。
そしてその後の研究でも、精子数の減少傾向は世界的に続いている可能性が指摘されています。
この背景にある有力な原因のひとつが、プラスチックなどに含まれる
「内分泌かく乱物質(環境ホルモン)」です。
はじめて聞く方も多いと思いますので、今回はその理由と、今日からできる対策をお話ししていきます。
内分泌かく乱物質とは?
内分泌かく乱物質とは、⼈間のホルモン(内分泌)の働きに⼲渉し、からだのバランスを乱してしまう化学物質のことです。
英語では「Endocrine Disrupting Chemicals(EDCs)」と呼ばれ、
プラスチック、農薬、化粧品、洗剤など、⽇常⽣活のあらゆるところに潜んでいます。
特に妊活との関わりが深い代表的なものが、次の2つです。
- BPA(ビスフェノールA)
- フタル酸エステル類
BPA(ビスフェノールA)の影響
BPAは、プラスチック製品やレジンコーティングなどに使われる化学物質です。
体内に入るとエストロゲン様作用(女性ホルモンに似た作用)を示し、
本来のホルモンバランスを乱してしまいます。
主な影響として、以下のような点が指摘されています。
- 精⼦の質の低下(数・運動率・形態の悪化)
- 男性ホルモンのバランスが崩れ、妊娠しづらくなる
- ⼥性の排卵やホルモン分泌に影響し、妊娠しにくくなる
- 胎児・⼦供の⽣殖器の発達に悪影響を及ぼす可能性
- 思春期が早まるなど、発育のタイミングが乱れるリスク
- 肝臓や腎臓への負担、代謝異常との関連
つまりBPAは、「⼤⼈の妊娠しやすさ」と「これから⽣まれてくる⼦どもの将来の⽣殖機能」の両⽅に影響する可能性がある物質だと考えられています。
フタル酸エステル類の影響
フタル酸エステルは、プラスチックを柔らかくするための可塑剤として広く使われています。
ラップ、チューブ、ビニール製品、床材、化粧品など、こちらも⽇常のさまざまなものに含まれます。
妊活・⽣殖への影響として、次のような報告があります。
- テストステロン(男性ホルモン)の減少
- 精⼦の質の低下、精巣機能の障害
- 無⽉経や排卵障害
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)との関連が疑われている
- 妊娠中の暴露により、⼦どもの発達遅延や⾃閉スペクトラム症リスクとの関連が指摘されている
もちろん「内分泌かく乱物質だけが不妊の原因」というわけではありませんが、
不妊治療だけに⽬を向けて、⽇常の化学物質への暴露を放置してしまうと、
本来のポテンシャルが発揮されない可能性があります。
不妊の原因は台所にある?BPA・フタル酸エステルとキッチン
実際に、私たちがもっとも⾝近に内分泌かく乱物質を取り込んでしまう場所のひとつが「台所」です。
BPA・フタル酸エステルが多いもの
- プラスチック容器(お弁当容器、保存容器、カップ麺の容器など)
- プラスチック製ラップフィルム
- テイクアウトやコンビニ弁当の容器
- 冷凍食品のトレーやパッケージ
- ペットボトル、缶の内側コーティング
これらを電子レンジで加熱することで、
容器からBPAやフタル酸エステル類が溶け出し、⾷品に移⾏しやすくなります。
その結果、⾷事といっしょに化学物質を体内に取り込んでしまうのです。
妊婦9万⼈以上を追跡した研究から分かったこと
⽇本の⼤規模なコホート研究では、妊婦さんを9万⼈以上追跡し、
市販弁当や冷凍⾷品を週に1回以上⾷べるグループでは、
ほとんど⾷べないグループに⽐べて死産のリスクが2倍以上に⾼くなっていた、というデータも報告されています。
もちろん「市販弁当=必ず悪い」という単純な話ではありませんが、
コンビニ弁当や冷凍⾷品が増えるほど、プラスチック容器や電⼦レンジ加熱の頻度も⾼まり、
内分泌かく乱物質への暴露が増える可能性がある、ということは知っておいて損はありません。
有害物質が「危険」と認められるまでには100年かかる
「今も法律で禁⽌されていないなら、安全なんじゃないですか?」
そう思う⽅もいるかもしれません。
しかし、ここで思い出してほしいのがアスベスト(石綿)の歴史です。
- 19世紀末にはすでに危険性が指摘されていた
- 20世紀半ばには発がん性が明確になっていた
- それでも建材などに⻑年使われ続け、多くの⼈が被害を受けた
- 日本でも完全な禁⽌(0.1%以下を含めた規制)まで約100年近くかかった
つまり「法的に禁⽌されていない=安全」ではなく、
むしろ「将来、規制される可能性がある物質に、いま日常的に触れている」
というケースが少なくありません。
現在、プラスチック容器や電⼦レンジの使⽤が禁⽌されていないからといって、
妊活中・妊娠中の⾝体にとって安全とは限らない、という視点はとても重要です。
5つの対策⽅法:今日からできる「環境ホルモン」デトックス
「じゃあ、具体的に何を変えればいいの?」
という⽅のために、妊活中にとくに意識したい5つの対策をまとめました。
① 有機農産物をなるべく選ぶ
農薬や化学肥料の量をできるだけ減らした、有機(オーガニック)栽培の⾷品を選ぶことで、
体内に⼊る化学物質の総量を減らすことができます。
- すべてを有機にする必要はありません
- 特に毎日食べる野菜や果物から、できる範囲で切り替える
- 「よく洗う・皮をむく」だけでも暴露量は減らせます
② ⽣鮮⾷品・未加⼯品をメインにする
加⼯⾷品や惣菜、レトルト、冷凍⾷品が増えるほど、
プラスチック容器・包装+電⼦レンジ加熱の機会が増えます。
なるべく「素材に近い⾷品」を選び、家で調理することで、
⾷品から取り込む内分泌かく乱物質を減らすことができます。
③ ⾷品保存容器を⾒直す(ガラス・⾦属へ)
台所の保存容器をチェックしてみましょう。
- プラスチック容器 → ガラス製保存容器(耐熱ガラス)、ホーロー容器などに少しずつ切り替える
- ラップの上からレンジ加熱する習慣をやめる
- 熱い⾷べ物をプラスチック容器に⼊れない
「電子レンジに入れるのはガラスと陶器だけ」
というルールにするだけでも、暴露量をだいぶ減らせます。
④ 電子レンジにプラスチック容器を入れない
忙しい毎⽇で電⼦レンジを完全にやめるのは現実的ではありません。
しかし、「プラスチック+電子レンジ」だけは避けることはできます。
- コンビニ弁当や惣菜は、いったんお皿に移してから温める
- 冷凍⾷品も、可能なら耐熱ガラスや陶器の器に移し替える
- ラップの代わりに、シリコン蓋やミツロウラップを使う
⑤ 家庭で⾷事をする回数を増やす
外⾷やコンビニ⾷が多いほど、どうしてもプラスチック容器に触れる機会は増えます。
妊活中はなるべく「家で⾷べる回数」を意識的に増やしてみましょう。
- 週に1〜2回、テイクアウトを「家ごはん」に置き換えてみる
- 作り置きおかずを活用して、「⾷べるだけ」の状態を作る
- 夫婦で⼀緒にキッチンに⽴ち、「妊娠しやすい⾷卓」を作る
3日間プラスチックを避けると、体内のBPAが半分以下に?
興味深いことに、たった数⽇間プラスチック製品や加⼯⾷品を避けて
⽣鮮⾷品中⼼の「フレッシュな⾷事」に切り替えたところ、
尿中のBPAなど環境ホルモンの濃度が50〜60%以上低下したという研究報告もあります。
つまり、環境ホルモンは「⼀⽣抜けない毒」ではなく、
⽇々の選択を変えることで、短期間でも体内の負担を減らせるということです。
「ゼロ」にするのは不可能。だからこそデトックスできる体づくりを
現代社会で、化学物質を完全にゼロにすることはほぼ不可能です。
空気・⽔・⾷べ物・住環境、どこにでも少なからず存在しています。
だからこそ⼤切なのは、
- できる限り「⼊れない」工夫(暴露量を減らす)
- ⼊ってしまったものを「出せるからだ」(デトックスできる体)
デトックスの鍵① 腸内環境を整える
有害物質の多くは、胆汁や便と⼀緒に排泄されます。
そのため、
- 毎日スムーズな排便があること
- 発酵食品(味噌・納豆・キムチなど)や食物繊維をしっかりとること
- 加工食品・砂糖・トランス脂肪酸を減らすこと
こうした習慣が、結果的に「環境ホルモンを溜め込みにくい体」づくりにつながります。
デトックスの鍵② 肝臓の解毒力を高める
肝臓は、からだに⼊った化学物質を解毒する「解毒工場」のような臓器です。
妊活中はとくに、肝臓に負担をかけすぎない⽣活が重要です。
- アルコールを控える
- 過食・夜遅い食事を減らす
- 質の良い睡眠をとる
⼀時的なプチ断食(ファスティング)は、肝臓や腸の負担を減らす⼿段のひとつですが、
妊娠中・授乳中、持病のある⽅は危険な場合もあるため、必ず医師や専門家に相談の上で行ってください。
デトックスの鍵③ 体脂肪を整える
内分泌かく乱物質の中には、脂肪に溶けやすく、体脂肪の中に蓄積しやすいものもあります。
適切な運動と⾷事で、過剰な体脂肪を減らしていくことも、妊娠しやすい体づくりと同時に
有害物質のデトックスにつながります。
まとめ:妊活は「からだの中」と「台所」から整える時代へ
不妊の原因は、⼀⼈ひとり違います。
年齢、ホルモンバランス、卵巣や⼦宮の状態、精⼦の質、⽣活習慣、ストレス…。
その中に、「内分泌かく乱物質」という見えない要因が静かに紛れ込んでいるかもしれません。
妊活をがんばるのであれば、病院での検査や治療と同じくらい、
「毎日の台所」や「使っている容器」に⽬を向けることが、とても⼤きな意味を持ちます。
今日からできることは、ほんの⼩さな⼀歩でかまいません。
- プラスチック容器をレンジに⼊れるのをやめてみる
- 週に1回、コンビニ弁当を「家ごはん」に変えてみる
- ガラスやホーローの保存容器を1つ買ってみる
その⼀歩が、将来の「授かる⼒」と、⽣まれてくる⼦どもの健康を守ることにつながります。
妊活は、「からだの中」と「台所」から整えていきましょう。
※本記事の内容は医学的知見をもとにした一般情報であり、診断・治療を代⾏するものではありません。
妊活中・妊娠中・授乳中、また持病のある⽅は、⾷事やファスティング、サプリメント等の変更を行う前に、必ず主治医や専門家にご相談ください。

