採卵の質を高めるには、採卵前の体づくりが大切です
体外受精や顕微授精に進むと、多くの方が気になるのが「採卵で良い卵が採れるかどうか」です。
採卵数が多ければ安心というわけではありません。大切なのは、採れた卵が成熟し、受精し、分割し、胚盤胞まで育つ力を持っているかどうかです。
もちろん、卵子の質には年齢の影響があります。これは避けられない現実です。
しかし、年齢だけですべてが決まるわけではありません。同じ年齢でも、睡眠、栄養、血流、ストレス、冷え、炎症、糖代謝、腸内環境などによって、卵胞が育つ体内環境には差が出ます。
つまり、採卵の質を高めたいなら、採卵直前だけ頑張るのではなく、採卵に向けて卵子が育つ環境を整えることが大切です。
卵子の質は「直前の努力」だけでは変わりにくい
採卵が近づくと、急にサプリを増やしたり、食事を変えたり、運動を始めたりする方がいます。
もちろん、何もしないよりは良いかもしれません。しかし、卵胞は数日で急に育つものではありません。
卵胞は時間をかけて育っていきます。そのため、採卵の質を意識するなら、少なくとも採卵の約3か月前から生活を整える意識が大切です。
採卵周期に入ってから慌てるのではなく、採卵に向けて体の土台を整えておくこと。
これが、良い卵子を育てるための基本になります。
採卵で大切なのは「卵巣に栄養と酸素が届く体」
卵子は、体の中で勝手に良くなるわけではありません。
血液によって酸素や栄養が運ばれ、その環境の中で卵胞は育っていきます。
そのため、冷え、血流不足、栄養不足、睡眠不足、ストレス過多が続くと、卵胞が育つ環境は整いにくくなります。
病院では排卵誘発や採卵のタイミングを管理してくれます。
しかし、卵子が育つ毎日の体内環境は、日々の生活習慣の積み重ねで変わります。
採卵の質を高めるために見直したい8つの習慣
採卵前に意識したいことは、特別な裏技ではありません。
基本は、体に必要な材料を入れ、血流を整え、酸化を減らし、睡眠で回復することです。
1、タンパク質をしっかり摂る
採卵前にまず見直したいのが、タンパク質不足です。
タンパク質は、ホルモン、血液、酵素、筋肉、内膜、細胞の材料になります。
妊活中の食事というと、野菜やサラダを意識する方が多いですが、サラダだけでは材料が足りません。
おにぎり、パン、麺、サラダ、ヨーグルトだけの食事が続くと、糖質中心でタンパク質が不足しやすくなります。
採卵前は、毎食どこかにタンパク質を入れることを意識しましょう。
- 卵
- 魚
- 鶏肉
- 赤身肉
- 豆腐
- 納豆
- 味噌汁
- 貝類
特に魚、卵、大豆製品、味噌汁は、日本人の食生活にも取り入れやすい食材です。
採卵前は「何を抜くか」よりも、「体に必要な材料が足りているか」を確認することが大切です。
2、抗酸化を意識する
卵子の質を考えるうえで、酸化ストレスは無視できません。
酸化ストレスとは、簡単に言えば体の中で細胞がサビやすい状態のことです。
睡眠不足、ストレス、喫煙、飲酒、糖質過多、加工食品の多い食事、運動不足などが重なると、体の中で酸化が進みやすくなります。
卵子はとても繊細な細胞です。だからこそ、採卵前は抗酸化を意識した食事が大切です。
- ブロッコリー
- パプリカ
- 小松菜
- ほうれん草
- トマト
- にんじん
- キウイ
- ブルーベリー
- 緑茶
- 大豆製品
- ナッツ類
ただし、果物やナッツは体に良いからといって食べ過ぎる必要はありません。
果物は糖質、ナッツは脂質が多いため、少量を上手に取り入れることがポイントです。
3、地中海食に近い食事を意識する
妊活や体外受精の食事でよく話題になるのが、地中海食です。
地中海食とは、魚、野菜、豆類、果物、ナッツ、オリーブオイルなどを中心にした食事スタイルです。
ただし、日本人が無理に海外風の食事に変える必要はありません。
日本の食事に置き換えるなら、次のような形で十分です。
- 魚を増やす
- 野菜を増やす
- 豆腐や納豆を取り入れる
- 味噌汁を飲む
- 揚げ物を減らす
- 甘いものを減らす
- 加工食品を減らす
- 油は質と量を意識する
難しい食事法を始めるより、毎日の食事を「魚、野菜、豆、味噌汁」に寄せる方が現実的です。
採卵前の食事は、特別なものを食べることよりも、余計なものを減らして、必要なものを不足させないことが大切です。
4、血流を上げる
採卵前は、卵巣に栄養と酸素を届ける血流が重要です。
冷えや運動不足で血流が悪くなると、卵胞が育つ環境も整いにくくなります。
特に、デスクワークが多い方、座りっぱなしが多い方、足先が冷えやすい方は、下半身の血流を意識しましょう。
- 毎日20〜30分歩く
- 湯船に入る
- ふくらはぎを動かす
- 階段を使う
- 軽いスクワットをする
- 長時間座りっぱなしを避ける
- 足首やお腹まわりを冷やさない
激しい運動を急に始める必要はありません。
大切なのは、毎日こまめに体を動かすことです。
採卵前の体づくりでは、特別な運動よりも、血流を落とさない生活習慣の方が続けやすく、現実的です。
5、睡眠を最優先にする
採卵前に軽視されやすいのが睡眠です。
どれだけ食事に気をつけても、どれだけサプリを飲んでも、睡眠不足が続けば体は回復しにくくなります。
睡眠は、自律神経、ホルモン、血糖値、ストレス、免疫、疲労回復に関わります。
採卵前は、夜更かしを続けながら卵子の質だけを高めようとするのではなく、まず睡眠を整えることが大切です。
- 0時前に寝る
- 寝る2〜3時間前に食事を終える
- 寝る前のスマホを減らす
- 朝日を浴びる
- 休日も起床時間を大きくズラさない
採卵前は、睡眠を削って頑張る時期ではありません。
体を回復させる時間を確保することが、卵胞が育つ環境づくりにつながります。
6、血糖値を乱さない
甘いもの、菓子パン、麺類、ジュース、カフェラテ、お菓子が多い生活は、血糖値を乱しやすくなります。
血糖値の乱れは、眠気、だるさ、イライラ、脂肪の蓄積、炎症、ホルモンバランスの乱れにもつながります。
採卵前は、極端な糖質制限をする必要はありません。
ただし、糖質だけの食事を避けることが大切です。
- 朝食にタンパク質を入れる
- 甘い飲み物をやめる
- 菓子パンを食事にしない
- 野菜ジュースを常用しない
- 夜遅い炭水化物を控えめにする
- 空腹で甘いものに走らない
おにぎりだけ、パンだけ、麺だけでは、血糖値が上がりやすく、すぐにお腹が空きやすくなります。
ご飯を食べるなら、魚、卵、味噌汁、野菜を組み合わせる。
この組み合わせが、採卵前の体づくりでは大切です。
7、腸内環境を整える
採卵前は、腸内環境も意識したいポイントです。
腸は、栄養の吸収、免疫、自律神経、炎症に関わります。
せっかく良いものを食べても、腸の状態が悪ければ、必要な栄養をうまく活かせません。
便秘、下痢、お腹の張り、ガスが多い、甘いものがやめられないという方は、腸内環境の見直しも必要です。
- 味噌汁を飲む
- 納豆を食べる
- 海藻を取り入れる
- きのこを食べる
- 野菜を温かくして食べる
- 水分をしっかり摂る
- よく噛んで食べる
冷たいサラダばかりでは、体が冷えやすい方には合わないこともあります。
採卵前は、温野菜、味噌汁、スープなど、胃腸に負担をかけにくい形で野菜を摂るのがおすすめです。
8、ストレスを溜め込みすぎない
採卵前は、どうしても不安が強くなりやすい時期です。
卵は採れるのか。
受精するのか。
胚盤胞まで育つのか。
移植できるのか。
考え出すと、頭の中が不安でいっぱいになってしまうこともあります。
しかし、強いストレスが続くと、自律神経が乱れ、睡眠の質が下がり、血流や胃腸の働きにも影響しやすくなります。
不安をゼロにする必要はありません。
大切なのは、不安に飲み込まれたままにしないことです。
- 軽く歩く
- 深呼吸する
- 湯船に入る
- スマホ検索を減らす
- 寝る前に考え込まない
- ひとりで抱え込まない
妊活は、気合いだけで乗り越えるものではありません。
心と体の緊張をゆるめる時間も、採卵前の大切な準備です。
採卵前に避けたい習慣
採卵前は「何をするか」だけでなく、「何を避けるか」も大切です。
せっかく良い食事や運動を始めても、卵胞が育つ環境を乱す習慣が続いていれば、体は整いにくくなります。
喫煙
喫煙は、妊娠を目指す方にとって避けたい習慣です。
自分が吸わない場合でも、受動喫煙には注意が必要です。
採卵前だけでなく、妊娠を考え始めた段階から、できるだけ煙を避ける環境づくりが大切です。
飲酒
採卵前は、飲酒も控えめにしたい習慣です。
少しくらいなら大丈夫と考えたくなるかもしれませんが、体を整える期間と考えるなら、採卵前はできるだけ控える方が安心です。
過度なカフェイン
コーヒーや紅茶を完全にやめなければいけないわけではありません。
しかし、1日に何杯も飲む、エナジードリンクを飲む、寝る前にもカフェインを摂るという習慣は見直しましょう。
特に睡眠の質が悪い方は、午後以降のカフェインを控えるだけでも体が変わることがあります。
夜更かし
採卵前に一番もったいないのが、夜更かしです。
夜遅くまでスマホを見て、睡眠時間が短くなり、翌朝だるい。
この状態が続くと、自律神経もホルモンリズムも乱れやすくなります。
採卵前は、情報収集よりも睡眠を優先しましょう。
急激なダイエット
体重管理は大切ですが、採卵前の急激なダイエットはおすすめできません。
極端に食事を減らすと、タンパク質、鉄、亜鉛、ビタミン、ミネラル、脂質が不足しやすくなります。
卵子の質を高めたい時期に、材料不足の体にしてしまうのは本末転倒です。
採卵前は、痩せることだけを目的にするのではなく、栄養が満たされた体をつくることを優先しましょう。
CoQ10などのサプリはどう考える?
採卵前になると、CoQ10、ビタミンD、葉酸、亜鉛、鉄、ビタミンE、オメガ3など、さまざまなサプリが気になる方も多いと思います。
特にCoQ10は、ミトコンドリアや抗酸化に関わる成分として、採卵前に話題になることが多いです。
ただし、サプリは多く飲めば良いというものではありません。
体質、採血結果、服薬状況、治療方針によって必要なものは変わります。
自己判断で増やしすぎるのではなく、通院先の医師に確認しながら取り入れることが大切です。
サプリはあくまで補助です。
睡眠不足、栄養不足、血流不足、ストレス過多のままサプリだけ増やしても、体の土台は整いません。
採卵前の体づくりは、病院任せにしない
体外受精では、病院の治療が中心になります。
排卵誘発、採卵、受精、培養、移植という流れは、病院で進んでいきます。
しかし、卵胞が育つ体内環境は、病院だけでつくるものではありません。
毎日の食事。
毎日の睡眠。
毎日の血流。
毎日のストレス。
毎日の冷え。
これらの積み重ねが、採卵に向けた体の土台になります。
採卵で良い結果を望むなら、治療だけを頑張るのではなく、自分の体を整えることも同時に進める必要があります。
採卵前に当院で大切にしていること
当院では、採卵前の方に対して、単にリラックス目的だけではなく、体の土台づくりを大切にしています。
特に重視しているのは、血流、自律神経、冷え、睡眠、胃腸の働きです。
卵巣や子宮は、血流の影響を受ける臓器です。
体が冷え、肩や背中が緊張し、呼吸が浅く、睡眠が乱れている状態では、妊活に必要な体の回復力も落ちやすくなります。
鍼灸では、体全体の緊張をゆるめ、血流を整え、自律神経のバランスを整えることを目的に施術を行います。
また、必要に応じて、よもぎ蒸しや生活習慣の見直しも組み合わせながら、採卵前の体づくりをサポートします。
採卵は、卵巣だけの問題ではありません。
体全体の状態が、卵胞が育つ環境に関わっています。
採卵前の3か月で意識したいこと
採卵前の3か月は、ただ不安に過ごす期間ではありません。
自分の体を整えるために、できることを積み重ねる期間です。
1か月目:生活の乱れを減らす
まずは、夜更かし、甘いもの、冷え、運動不足、タンパク質不足を見直します。
完璧を目指す必要はありません。
今の生活の中で、明らかに体の負担になっていることを減らすことから始めます。
2か月目:血流と栄養を整える
歩く習慣、湯船に入る習慣、タンパク質を摂る習慣、味噌汁を飲む習慣を安定させます。
この時期は、体が少しずつ変わり始める時期です。
冷え、疲れ、眠り、便通、肩こりなどの変化にも目を向けましょう。
3か月目:採卵に向けて体を仕上げる
採卵が近づくと、不安が強くなりやすくなります。
この時期こそ、無理に新しいことを増やすより、睡眠、食事、血流、ストレス管理を丁寧に続けることが大切です。
採卵直前に慌てるのではなく、整えてきた体で採卵に臨むことを目指しましょう。
採卵の質を高めたい方へ
採卵の結果は、誰にも完全にはコントロールできません。
どれだけ努力しても、思うような結果にならないこともあります。
だからこそ、結果だけを見て自分を責める必要はありません。
大切なのは、今できることを整えて、少しでも良い状態で採卵に臨むことです。
採卵で質を高めるために必要なのは、特別な裏技ではありません。
- タンパク質を摂る
- 野菜と魚を増やす
- 甘いものを減らす
- 睡眠を整える
- 血流を上げる
- 体を冷やさない
- ストレスを溜め込みすぎない
- 喫煙、飲酒、夜更かしを避ける
この地味な積み重ねが、卵子が育つ環境を整える土台になります。
採卵は、病院だけで頑張るものではありません。
毎日の体づくりも、採卵に向けた大切な準備です。
これから採卵を控えている方、採卵結果に不安がある方、何を見直せば良いかわからない方は、一度ご相談ください。
体の状態を確認しながら、採卵に向けた体づくりを一緒に進めていきましょう。

